レーズンは、パンに混ざって初めて輝く。
そのままだと、ただの干した果物です。でもパンに練り込まれた瞬間、レーズンパンという一つの完成された味になる。レーズン自体が変わったわけではありません。組み合わせが変わっただけです。
これは、人にも当てはまると思っています。
努力では、埋まらない差がある
同じくらいの実力で臨んだはずなのに、驚くほど成果が出せた場面と、驚くほど苦戦した場面があります。振り返ってみると、その差は自分の能力だけでは説明がつきません。一緒に組んだチームメイト、上に立つ経営幹部、その会社が持つカルチャー。そういうものとの相性が、成果に大きく影響していました。
もちろん、この10年、20年で、自分の能力や人間性は成長しています。でも、別人になったわけではありません。同じくらいの実力でも、合う場所にいた時は120%の力が出せていた。それが正直な実感です。
厄介なのは、この「合う・合わない」と「努力の量」を、はっきり切り分けるのが難しいことです。結果が出ない時、それが努力不足のせいなのか、組み合わせが違うせいなのか。境界線はいつも曖昧で、簡単には判断できません。
だからといって、努力をやめていい理由にはなりません。踏ん張り続けること自体は、絶対に緩めてはいけない。その上で、判断のヒントになる問いが一つあります。今いる場所で、自分を必要としている人が、一人でもいるか。何人いるか、と言い換えてもいい。もしそれがゼロだと感じるなら、同じ量の努力をしていても、成果が出しにくい環境にいるのかもしれません。
僕自身、マーケティング、海外営業、SCM、商品企画、PMと、複数の職種を渡り歩いてきました。どの移動も、迷って選んだものではありません。やると決めたことをやり遂げた先に、次の目標が見えてくる。それを追いかけて自分から動いたこともあれば、実績を見た相手から声をかけてもらって動いたこともありました。組み合わせは、一度見つけたら終わりではなく、一つをやり遂げるたびに、自分の意思で選び直すものだと思っています。
「合わない場所」で努力し続けることの罠
厄介なのは、合わない組み合わせの中でも、努力すればある程度は結果が出てしまうことです。
だから多くの人は、「もっと頑張れば報われるはずだ」と思い込んで、合わない場所に留まり続けます。でも、そこでどれだけ努力を重ねても、正しい組み合わせの中にいる人が涼しい顔で出す結果には、なかなか追いつけません。努力の方向を疑うより先に、努力の量を増やそうとしてしまう。これが罠だと思っています。
罠にはまっているサインは、案外わかりやすいところにあります。同じだけ頑張っているのに、疲労だけが積み上がって、成果はなぜか横ばいのまま。自分を必要としてくれている人の顔が、だんだん思い浮かばなくなる。それでも「まだ頑張りが足りない」と、自分を責め続けてしまう。
ここで大事なのは、組み合わせを変えることは、負けでも逃げでもないということです。やり遂げたことを土台に、次の組み合わせへ自分の意思で動く。それは、特別なことではなく、これまで何度も繰り返してきたことと、本質的には同じです。
自分に聞いてみてほしいこと
もし今、頑張っているのに報われている気がしないなら。この問いを自分に向けてみてください。
- 今いる場所は、自分という「レーズン」が輝ける「パン」になっているか
- この場所で、自分を必要としている人は、何人いるか
- 結果が出ないのは、努力が足りないからか、それとも組み合わせが違うからか
- 合わない場所で踏ん張り続けることを、「頑張っている」と誤解していないか
境界線を一発で見極める方法はありません。それでも、努力を緩めずに、正しい組み合わせを、やり遂げるたびに自分で選び直していくこと。それは逃げでも甘えでもなく、結果を出すための一番の近道だと思っています。