最高の書店に出会いました。
専門書から実用書まで、さまざまなジャンルの本が同じ空間に並んでいる。
書店は、本を買う場所であると同時に、本や思想との出会いの場だと思います。
歩いているだけで、自分の知らなかった世界が次々と目に入ってきます。
その日も、気になる本を何冊も手に取りました。
でも、その中で一つ気づいたことがありました。
読みたい本と、本棚に置きたい本は、同じではない。
今日は、その話です。
目次
本棚は、思考の軌跡を並べる場所
ある対談形式の本を立ち読みしていて、いい言葉に出会いました。
もし一生に一台しか車を持てないなら、その車を大切にするはずだ。
それと同じように、自分の心と体も大切にしたほうがいい。
健康や運動について考えるきっかけになる、いい言葉でした。
でも、その本を買おうとは思いませんでした。
僕にとっては、その言葉と出会えたことで十分だったからです。
そこで、初めて気づきました。
僕にとって本棚は、読んだ本を保管する場所ではない。自分が何に出会い、何を考えてきたのか。その軌跡を残す場所なのだ。
だから、面白かった本をすべて置きたいわけではありません。
自分の思考に何かを残した本を、そこに置いておきたい。
本棚のスペースを与えるということは、自分の思考の一部として、その本を残すことなのだと思います。
消費する本と、残したい本
もちろん、残さない本に価値がないわけではありません。
気軽に読んで、その場で一つ学べれば十分な本もあります。
そういう本は、僕ならKindleでいい。
一方で、何度も開き直したい本。
書き込みをしたい本。
数年後に背表紙を見て、「あの頃、こんなことを考えていたな」と思い出したい本。
そういう本は、紙で手元に残したくなります。
以前、初心者向けのワイン講座を考えていたとき、漫画で学べるワインの本を買ったことがあります。
普段なら、本棚に残そうとは思わない形式です。
でも、そのときは「どうすれば初心者の目線に立てるだろう」という明確な問いがありました。
結果として、とても役に立ちました。
そこで分かったのは、本の形式そのものが重要なのではないということです。
その本を、何のために手に取ったのか。
問いを持って出会った本は、自分の思考の一部になっていきます。
本棚には、自意識まで並んでいる
もう一つ、少し厄介なことにも気づきました。
成功哲学や資産形成の本を手に取ると、どこか抵抗を感じる自分がいます。
なぜだろう。
考えてみると、「お金儲けに興味がある人だと思われたくない」という気持ちがありました。
世俗的なものから距離を置きたい。
もっと知的で、高潔なことに関心を持つ人間でありたい。
でも、それは本当に価値観なのでしょうか。
単に、そういう人間に見られたいだけなのかもしれません。
そう考えると、本棚は怖い場所でもあります。
そこには、自分が学んできたことだけではなく、
「自分はこういう人間でありたい」という自意識まで並ぶからです。
だからといって、何でも本棚に置けばいいとは思いません。
価値観に合わない本まで、無理に読む必要もない。
ただ、「これは自分には必要ない」と棚へ戻す前に、一度だけ考えてみる。
本当に興味がないのか。
それとも、そんな本を読む自分を認めたくないのか。
僕自身、実利を遠ざけることが高潔さだとは、もう思いません。
AIについて考えることも、自分のあり方を考えることも、お金について考えることもできる。
どれか一つに、自分を決めなくていい。
本棚は、理想の自分を演出する場所ではありません。その時々の自分が、何に出会い、何を考えたのかを残していく場所です。
だからこそ、少しくらい格好悪い本が混じっていてもいい。
それもまた、自分の思考の軌跡なのだと思います。
Key Takeaways
- 本棚は、読んだ本を保管する場所ではなく、自分が何に出会い、何を考えてきたかを残す場所である。
- 本の価値は、形式やジャンルだけでは決まらない。どんな問いを持って手に取ったかによって、その本の意味は変わる。
- 本棚には、知識や関心だけでなく、「自分はどう見られたいか」という自意識も並んでいる。
あなたへの問い
あなたの本棚には、どんな自分が並んでいるでしょうか。
何度も読み返した本。
一度しか開かなかった本。
人に見られても構わない本。
できれば、見られたくない本。
そこに並んでいるのは、あなたが学んできたことだけではありません。
何に憧れ、何を恐れ、どんな人間に見られたかったのか。
そんな自意識まで、背表紙のあいだに静かに残っています。
もし「自分らしくない」と避けている本があるなら、それは本当に必要がないからでしょうか。
それとも、その本を読む自分を認めたくないからでしょうか。
本棚に置く本を選ぶことは、他人に見せる自分を選ぶことでもあります。
だからこそ、ときどき眺めてみたい。
そこに並んでいるのは、理想の自分だけなのか。
それとも、格好悪さや迷いも含めた、これまでの自分なのか。
本棚は、思考の軌跡を並べる場所です。
そして同時に、自分がどんな人間でありたいと願ってきたのかを、黙って映し出す場所なのだと思います。