ある日、生まれて初めて、飛行機に乗り遅れました。
到着時間と出発時間を勘違いするという、今でも信じられないようなミスです。
空港に着いた時には、チェックインは締め切られていました。
マネージャーに事情を説明しても、状況は変わりません。
規則は、規則です。
でも今振り返ると、あの日に起きていた一番大きな問題は、飛行機ではありませんでした。
僕自身の心でした。
目次
一つのミスが、人生そのものに見えてしまった
搭乗できないと分かった瞬間、頭に浮かんだのは、
「終わった。」
という言葉でした。
仕事。
キャリア。
信用。
たった一つのミスなのに、人生全体が崩れてしまったような感覚でした。
もちろん、そんなことはありません。
飛行機に乗り遅れただけです。
それでも、その時の僕には、それ以上の出来事に思えてしまいました。
人は疲れると、世界まで狭くなる
あの頃は、仕事に全力で向き合っていました。
毎日張り詰めた状態が続き、「失敗してはいけない」という緊張感の中で過ごしていました。
今なら分かります。
飛行機に乗り遅れたことが問題だったのではありません。
心の余白がなくなっていたことが、本当の問題でした。
人は疲れると、一つの出来事を人生全体の問題のように感じてしまいます。
あの夜は、まさにそんな状態でした。
救ってくれたのは、正論ではなかった
途方に暮れていた時、偶然、友人から電話がかかってきました。
事情を話すと、一言だけ。
「今日はうちに泊まりなよ。」
友人の家で夕食をご馳走になり、その夜はバッハの《ピアノ協奏曲 ト短調 BWV1058 第1楽章》を聴きながら、他愛もない話をしました。
励まされたわけではありません。
人生論を語られたわけでもありません。
ただ、安心して過ごせる時間がありました。
今思えば、それだけで十分だったのです。
一晩眠ると、人生は終わっていなかった
翌朝、目が覚めると、不思議なくらい気持ちは落ち着いていました。
飛行機はまた飛ぶ。
仕事も続く。
人生も続いていく。
前日の絶望は、まるで霧が晴れるように消えていました。
あの夜、終わりかけていたのは人生ではありません。張り詰め続けていた心でした。
ハンブルクという街を思い出すたびに、この出来事も一緒によみがえります。
そして今でも、バッハの《ピアノ協奏曲 ト短調 BWV1058 第1楽章》を聴くと、あの夜の空気と、友人の優しさを思い出します。
Key Takeaways
- 一つのミスが、人生全体を決めることはない。
- 疲れている時ほど、世界は実際より狭く見えてしまう。
- 人を救うのは、正しい言葉ではなく、安心して過ごせる時間であることがある。
あなたへの問い
もし今、一つの失敗で自分を責め続けているなら。
それは本当に、人生を左右する出来事でしょうか。
それとも、疲れた心が世界を少し狭く見せているだけでしょうか。
一晩眠るだけで、昨日とは違う景色が見えることがあります。
だから今日だけは、自分に少し優しくしてみてもいいのかもしれません。